大きな音がした。 目の前が、ど派手な蛍光色に覆われる。 自分が何を見ているのかわからず 何度か目を瞬かせてみたが、 やはり何かわからなかった。 あぁ、これはフラッシュか。 と頭が理解するまでに1秒ほどかかったのだろうか。 あと少しでも遅かったら、私は頭から地面に突っ込んでいただろう。 「何だ?」 意識して出したわけではない、 そんな一言をもらしながら 私は両腕と右足を前に出し 目の前にあった地面に頭から落下するのを防ぐ。 『あれ?』 同時に誰かの声が降って来た。 なので、誰かが何かをしたということがわかった。 突然のフラッシュといい、一瞬遠のいた意識といい たぶん、延髄を打ちでもしたのだろう。 とりあえず今は顔を上げなくては。 『早くしろって』 『うるせえな』 急に腰に何かが巻きついたかと思うと 足と手のひらに掛かっていた体重が消え、 かわりに腰に体重が掛かった。 誰かに抱え上げられたらしい。 「痛い」 ベルトの金具が腹に抉りこんで痛みを与えてくる。 このままどこかに連れて行かれる、という わかりきったことよりも 今この瞬間のベルトの痛みをどうにかして欲しい。 そう 殴られるのも 蹴られるのも それがエスカレートした行為も 私に痛みを与えることなどできないのだから。 【輪姦】 今回の男たちは理由を言わなかった。 もしかしたら、こいつらに襲われるのは初めてではないのかもしれない。 だとしたら、私は相当隙だらけということになる。 少しは警戒したほうがいいか? いや、そんなものいくらしても無理だろう。 何しろ数でこられたら暴れるだけ体力の無駄なのだから。 誰かが私の白衣の襟を引っ張った。 ご丁寧にも、白衣を脱がしているようだ。 タイをほどかれた。 引っ張られ、シュッという音とともに襟からタイが引き抜かれる。 タイを引き抜いた際に発生した摩擦熱が、 シャツの生地を通して私の首にまで伝わってきた。 まじまじと、目の前の男を見る。 記憶にない顔だ。 いや、忘れているだけなのだろうか。 「おい、脱がすな。男の体を見たって面白くない」 後ろから声がした。 「俺は見るほうが好きなんだ」 私の前から声がした。 珍しい物好きもいるものだと、 少し感心する。 「ほら、腰上げろ」 どこかの部屋に座らされ、というよりは投げ出され 地面に尻餅をついたまま男たちに囲まれて 挙句の果てには、命令され、実行する私がいる。 私が腰を上げると、下着ごとズボンを取り去られた。 正直、ベルトの金具が腹に食い込んだままだったので 少しほっとする。 無意識に痛かった腹を撫でた。 「余裕って顔だなぁ」 「やっぱアレじゃね?俺らがやっちゃってから癖になったんじゃん?」 「噂だろ?」 「おい。お前他の奴ともやってんの?」 会話の流れからして、今のは私に聞いたのだろう。 私は顔を上げて、とりあえず私の目を見ているやつと 視線を絡ませてから言った。 「好きでシたことはない・・・」 言ったというよりは、呟いた。 男たちが笑った気配がした。 「は。まぁイイケド。とりあえず俺もう勃ってるんだけど」 「早」 「俺性欲強いんだからしゃーねーべ」 「もう慣れてんだろ?お前」 私は困った。 慣れてると言われても、いつも好き勝手使われている体だ。 どう返事をしていいものかわからない。 私の沈黙をどう取ったのか、 男たちは私の足を抱え上げた。 背後にいた男が 私の左膝の裏に手をいれて持ち上げる。 私の前にいた男が 私の右膝の裏に手のひらを当て、持ち上げる。 後ろにいる男にほとんど体重を預け 足を開いたみっともない状況をよそに 私は顔を上げた。 後ろから私の左膝を抱え上げる男が一人。 私の前で、足の付け根(恐らくは肛門)を覗き込みながら、私の右膝を支える男が一人。 斜め前から、少し背を丸めて上から覗き込む男が一人。 ほんの少し離れた机に寄りかかり、というよりは机に座って 煙草に火をつけた男が一人。 やはり見知った顔はいなかった。 「なんかこっから出てんだけど」 前にいる男が、私の肛門に指を這わせた。 「それはさっき・・・」 「げぇ、マジかよ。シラネー奴の後に入れるとかキショイんだけど」 「さっすが人気者は大変だねー」 「なら俺先にやらせろよ。俺も中にぶちまけるけど」 私の正面にいた男が眉をしかめた。 そしてその男のすぐ後ろにいた男が、身を乗り出してくる。 「てかお前この間も散々俺らが出した後に突っ込んでたじゃん」 「テンションの問題よ、テンションの」 私の後ろにいる男と さっきまで私の右膝を支えていた男がそんな会話をする。 身を乗り出した男は、そのやり取りを聞いているのか 私の右膝を抱え 胸に足がつくほど強引に肛門をさらけ出させた。 腰骨で体重を支えられるわけもなく、危うくバランスを崩しかけ 咄嗟に目の前の男の肩に縋る。 私に肩を掴まれた男は何も言わず、 指を一本私の中へと入れた。 「痛い・・・」 「あぁ、少し腫れてんな、ここ。ちょーきつそう」 「どれどれ」 後ろにいた男の指が、さらに入ってきた。 手荒に扱われ、既に若干腫れている私のそこは熱を持ち 男たちの指を冷たく感じさせる。 二人の男の二本の指が、無遠慮に私の中をかき回す。 それぞれが別の意思を持って動くため 入り口を、中を拡張され、数時間前にできた擦り傷が疼きだす。 私が顔を歪めたのに気づいたのだろうか。 目の前にいた男が、私の顔を覗き込んだ。 視線に気づいて顔を上げると 男はニヤリと笑った。 彼が話しかけてきたので、私はこの行為の最中には珍しい【会話】をする。 「嫌がらなくなったのか?前は殴ってようやく大人しくなったのに」 「・・・体力の無駄だろ」 「へぇ。でもちょっと暴れてくれないとなんとなくやる気がねぇ」 「ハッ・・・殴って興奮する方なのか?・・・男を相手によくやるよ」 「この状況でも口だけはご健在で、何よりですよ」 意地悪く笑った。 でも、それなりにいい男だな、と思う。 「お前そのまま指突っ込んでろよ」 言うと、自らのジッパーを下げ 既に勃起しているイチモツを取り出した。 頭は上を向き、裏筋がくっきり見て取れる。 結構イイモノをお持ちで、と思っている最中に 口に突っ込まれた。 「イッテ。歯立ててんじゃねーよ」 急に突っ込まれたら口を開けようがないだろう。 そりゃもちろん、進んで開ける気もなかったが。 目線を上げて、男を睨む。 反抗される方が好きなのだろうか。 男のものは私の口の中で跳ねた。 「ぐっ」 そしてまた唐突に奥まで突っ込まれ、むせた。 生理的な涙が出てくる。 目の前の男の陰毛が何度も眼前に迫っては離れ、 迫る度に襲い来る嗚咽感をこらえた。 男のカリで掻き出された唾液が 口元を伝っていくことが気持ち悪い。 拭いたくても拭えぬ現状が早く終わればいい、と 私は舌の中央を少し盛り上げて 男の裏筋に当たるようにする。 目の前の男が一瞬腰を引いたことに 内心ほくそ笑んだ。 「おい、ちょっと抜け」 「あぁ?」 私の後ろにいた男が後ろから右腕を伸ばし 目の前の男の腰を押した。 ジュルリという唾液音とともに私の口の中のペニスが抜かれ、 同時に、掴まれていた私の左膝は自由になった。 「もう入るだろ?」 ぴしぴしと内股を叩かれ、私は膝立ちとなった。 後ろにいた男は、私のすぐ左側で両足を前に投げ出し 視線で私を促した。 男がジッパーを下げている間、 私は男に背を向けたまま、腰をまたぐ。 「うし。そのまま腰落とせ」 腕を前に置こうとして、男の足が邪魔なことに気づいた。 逡巡した後、男の膝上辺りに手を置いた。 足をさらに左右に開き、 言われた通りに腰を落とす。 尻に棒が当たったかと思うと その棒は動き、先端は私の肛門の前へずらされた。 今更ながらに覚悟を決め 私は深呼吸をした。 息を吐きながら、なるべく力まないように ゆっくりと腰を落とす。 熱い塊が入り口を押し広げるのを感じた。 「すげ。広がってる」 「見るな・・・!」 言われたことに少なからずショックを受けた。 同時に、結合部を見られていることに意識が集中し 顔が熱くなるのを抑えられなくなる。 男のモノを全て飲み込んでから、 動揺を押し殺すように、もう一度深呼吸をする。 その様子を見た、 目の前でまだ勃起させたまま待っていた男が 私の口元にまた近づけてきた。 私は躊躇わずに唇を開け、 吸い込むように受け入れる。 下にいる男が私の腰を掴んだ。 その腕は、私に腰を動かすよう求めている。 目の前の男のものを咥えているため 上下に動くことができないと判断し、 私は腰を前後に揺らすことにする。 ゆるゆるとした動きだが 下にいる男は動きを強要しなかった。 10秒もしないうちに、口の中に塩辛い味が広がりだした。 それは男が腰を引く度に舌に広がり 男の先端から出始めた精液だということを私に伝える。 ぞくり、と。 背が震えた。 数時間前に何度も搾られ 今日はもう勃たないだろうと思っていた私のペニスが頭をもたげた。 男の精液の味に私は興奮したのか。 まるで変態だ。 「何笑ってやがる」 上から声が降って来た。 私は視線を上に戻す。 答えられるわけがないので、 ただ見上げた。 「・・・勃起してっからだろ」 机に座って煙草を吸っていた男が初めて声を発した。 どことなく聞いたことのある声だと思いながら 視線をそちらに移す。 が、やはりその顔に見覚えはなかった。 そして、その男の言葉を確かめるためか 私の下にいる男が上半身を少し起こし、 両の手が私の腹から下を探るように動いた。 その指先が先端に触れ 私は思わず呻く。 「うわ。変態じゃん」 「淫乱なんだろ」 「てかさっさと終わらせろよ。俺いれらんねー」 「何だ、そのままおしゃぶりしてもらうんだと思ってた」 「そうなる前にさっさと代われってーの」 「ハイハイ。じゃ噛まれないように抜けよ」 また私の口から引き抜かれた。 抜けるその瞬間まで、吸い付くように唇を動かす。 上からはやはり呻き声が降って来た。 男の動きは緩やかだった。 いつの間にか彼は上半身を完全に起こし 私の肩に顎をおいていた。 まるで後ろから抱きしめられているようだ。 時折漏らす熱い息が耳元をかすり その度に私は体をよじる。 背中が熱い。 「う・・・もっとはや・・・く」 もっと早く、荒々しく突いて欲しい。 すがるように周囲に視線を走らせた。 相変わらず机に座って、けれどじっとこっちを見ている男と 視線が交わった。 私が男から視線をはずせないでいると 男はニヤリと笑った。 そして、 「おい、まだかよ」 「まだ。てか自分でこすらなきゃいいじゃん」 と会話をする男たちに 彼は提案した。 「いい案がある」 ニヤニヤとした笑みを浮かべて彼は私に近寄ってきた。 私の前で屈むと、おもむろに腕を伸ばす。 その腕が私の後ろへ周り、 今も男を飲み込んでいるソコをなぞる。 そしていきなり指をねじ込んだ。 思わず呻き、腰を上げようとするが 私の下にいる男が腰を抑えて離さない。 目の前の男が何を意図しているかが伝わり 私は思わず身を震わせた。 「無理だ・・・あっ・・・はいらない」 「きついもんなぁ。でも何事もやってみなくちゃな?」 気づくと、私は一人でその場に放置されていた。 男たちの姿はなかった。 体を起こそうとする。 骨がきしむ音がした。 腰骨を無理やり開かされたためだろう。 溜息をつき、私は窓を仰ぎ見た。 空には私を照らすものはない。 自分の姿を自分でも見る心配がないことに酷く安堵する。 「・・・」 助けを呼ぶにも声が出ない。 私が求める人はいない。 あぁ、何故。 こんなときにお前を思い出すのだろう。 Fin ---------*---------*---------*---------*--------- ともひと 輪姦です。そのまんまですね。 2007.10 ---------*---------*---------*---------*---------