『初』






 それは初めてだった。
 体験したくないものでもあった。
 一生。


「ひ・・・でぇよ・・・・・・・っ」


 酷く掠れた声が出た。
 それでも必死で出した声だった。
 ギシリ
 そんな音が自らの体から出たような気がした。
 体は酷く軋んだ。


「・・・っ」


 長い間無理強いされた体は、中々言うことを聞かない。
 じれったい。
 そしてとても悔しい。


「ゆる・・・さ、・・・からな。ユルサ・・・ネェ」


 大きく息を吸う。
 そして放置したまま出て行こうとする彼に言う。


「オボエ・・・テロ」


 絶対忘れないからな。


 憎しみと悲しみを込めた目で言う。
 それが彼の目的だとは知らないで。










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ともひと
2004.3
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