『真』

























それは真実だったのか。
今となってはわからないんだ。









ただ彼は。
哀しそうに。
切なそうに。
今にも泣きそうに。
笑っていた。
そして告げた。











俺に告げた。



さよならと告げた。


































開け放った窓から光が漏れてくる。
学校での授業は退屈で。
ただ黒板に書かれたものをツラツラと書き写していた。
幼馴染は不信そうに心配そうに。
そんなに自分の顔は酷いのだろうか。
なにか違和感でもあるのだろうか。

















あぁ。それなら、アイツも。






















今の俺を見れば、アイツも。
俺に別れを告げたアイツも。
俺のことを心配してくれるのだろうか。



哀しそうに。
切なそうに。
今にも泣きそうに。
笑っていたあの顔が。



焼きついて離れない俺のことを。
今俺がアイツを思い出しているように。
















アイツも俺を思い出して想っていてくれているのだろうか。


















そうでなければ、俺は。
俺のこの想いは。






















だってお前は俺に言ったじゃないか。
アイシテルって俺に言ったじゃないか。
俺の腕の中にいたじゃないか。
今も俺を支配しているくせに。

















あの顔で。

哀しそうに。
切なそうに。
今にも泣きそうに。
笑った。

その顔で。



俺にアイシテルと言ったじゃないか。



なのに



あの顔で。

哀しそうに。
切なそうに。
今にも泣きそうに。
笑った。

その顔で。



俺にサヨウナラと言ったんだ。




















どっちがお前なんだよ。
どっちもお前なのかよ。
信じられねえよ。
教えろよ。
ホントのお前を。





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ともひと
2004.3
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