声 声が聞こえた。 呼ばれたような気がした。 目を開けようとしたけれど重たくて開かなかった。 瞼から力を抜いて悪あがきを止めた。 声が自分を叱咤した。 目を開けようとしたけれどやっぱり無理だった。 だから心地よい浮遊感の中にまた身を任せた。 声が微笑んだ。 温かかった。 どんな顔をしているんだろう。 気になったから目を開けようとした。 やっぱり開かなかった。 初めて憤りを感じた。 あの声がある方へ。 あの声がいる方へ。 行かなきゃいけない。 誰かが僕を呼んでる。 ねぇ、誰。 声が焦っている。 声が切なげに僕を呼んでいる。 声が。 僕を呼ぶ声が泣いている。 行くよ。 今行くから。 泣かないで。 お願い。 泣かないで。 あぁ、そうだ。 この声は僕の大切な。 大事な。 この声は。 ------------------------------------------- ともひと そして彼は鎧の体になりました。 2004.4 -------------------------------------------