月 雲が晴れた。 君の顔がよく見えるようになった。 泣いているかと思った君は笑っていた。 私は驚いた。 驚いて、思わず剣を落としそうになった。 君は私のその手を上から抑え、支えた。 刺さった剣が抜けないように支えた。 雲が晴れた。 私の顔は彼からよく見えるのだろう。 君は何て思ったのだろう。 私は今どんな顔をしているのだろう。 わからなくて。 気づくと君は私の震える手を握っていた。 そして私の後ろから声が。 彼の最期を願う声が。 私は彼らの声が理解できなかった。 ただ震える手をどうすればいいのか。 それだけを悩んでいた。 殺せ その声を君は理解した。 君は。 君は僕の腕を掴み、そのまま引いた。 ずるりと。 そんな感触が伝わった。 ゴツンと何かがあたった。 私はわからなくて、思わず彼を見上げた。 彼はまた笑っていた。 何とも言えない感触が伝わってきた。 君の足が震えた。 口から、赤い液体が流れていった。 とても赤く紅く感じた。 君は私に近づいてきた。 私の剣をその体で伝い、私に近づいてきた。 思わず後退りしそうになった私の肩に。 彼は頭を置いた。 皆の目の前で。 彼は。 私は。 最後の抱擁をした。 手から力を抜く。 立っていた君は倒れた。 私は君だった物に一瞥をし、王座へと向かった。 すぐ後ろで歓喜の声が上がった。 何事かと思って振り返った。 するとどうだろう。 物と共に横たわっていた剣は立っていた。 物は倒れたままだったけれど。 物の腹に刺さったままの剣は立っていた。 その光景は君を弔う墓のようだった。 僕の代わりに弔っておくれ。 今君を弔うのはその剣と、空に輝く青白い月だけだけれど。 今はそれだけで勘弁しておくれ。 きっと私も後で弔おう。 だから私をもう一度王座へ振り向かせておくれ。 剣と月で勘弁しておくれ。 ------------------------------------------- ともひと これもたかつらさんが書いたブツを見て以下略。 創作意欲が刺激される作品っていいですね。 ・・・・目標? 2004.4 -------------------------------------------