堕
















 俺も堕ちたもんだなぁとふと思った。
 まさか自分がこんなことまでするとは思わなかった。
 あんなくだらないことで、こんなことをするなんてな。

「にいさーん」

 あぁ。
 お前にそう呼ばれた日が懐かしいよ。
 あの頃はお前も可愛くってな。
 よく組み手を・・・・

「・・・・・」

 いや、やっぱり可愛くなかったな。
 うん。
 背が低いところだけは可愛かったな。

「僕が成長期に入って伸び始めたんだよね」

 ・・・・唯一の可愛いところまで無くなる前でよかったな。
 今はこんなだから、全然可愛くねぇの。

「ちょっと、兄さん」

 ・・・・だからって俺もここまでする必要は無かったよな。
 ああ、それは確かにそうだ。
 ちょっとやりすぎたかな・・・・。
 俺もここまで馬鹿になるなんて思わなかったよ、アル。

「鋼の、背だけではなく心も小さかったのか」

 アル。
 ごめんな。
 落とし穴にお前をはめた俺を許してくれ。
 俺も馬鹿なことをしたと思ってる。
 今お前の頭が俺より下にあってちょっと嬉しいとか。
 そんなことはあるけど無いって言っておくぞ。

 だからアル。
 俺は今反省した。
 でもこれからのは反省しない。
 わかってくれるよな、アル。
















 パンッ











「あ・・・・」

 アル、すまない。
 俺は今猛烈に嬉しい。
 こんな馬鹿なことが出来てとても嬉しいと思うんだ。
 ほんと、堕ちたもんだよな。

「・・・落ちたのは私なのだが」

 ほらアル、上がってこいよ。
 昼飯でも食いに行こうぜ。

「うん」

 腹減ったなー。

「おい。鋼の。私はどうなる」

 ん?今なにか聞こえたか?

「え?何も聞こえなかったよ、兄さん」

 そうだよな。
 あ、あの穴、ちびっ子が落ちると危ないよな。
 埋めておくか。

「そうだね、兄さん」

 よいしょ。

「ちょ、待」









 パンッ


















































「へぇ、そんなことがあったんですか」

「だから無能って言われるんですよ」

「・・・・・酷いな、君は」 















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ともひと
 焔鋼なのか兄弟なのか弟兄なのか。
 よくわからないところが読みどころです(ぇ。

2004.7
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