仁




















雑踏の中転んだ。
誰かの足に引っかかった。
地面に手をついて上を見上げると、とても迷惑そうな顔をしていた。

ごめんなさい、と言うと同時に罵声が返ってきた。
ムカムカして、自分も怒鳴り返した。




また雑踏の中転んだ。
誰かが足に引っかかった。
何とか踏ん張って後ろを見ると、とても悲しそうな顔をしていた。

ごめんなさい、と言われてそのまま走って行った。
焦って「いいえ」と、見えなくなった背中に返した。





いつから人の目を見ない人が増えたんだろう。
いつから人の目を見なくなったんだろう。








何もないところで転んだ。
自分の足に蹴躓いた。
みっともない格好で倒れると、上から嘲笑が降ってきた。

何も言えなくて、ただ無性に腹が立った。
気づくと辺りに怒鳴り散らしていた。




また何もないところで転んだ。
自分の足に蹴躓いた。
みっともない格好で倒れて、そのまま起きることを諦めた。

何も言わないで、何も出来なくて転がっていた。
「大丈夫?」気づくと目の前に手があった。





いつから人の目を恐れるようになったんだろう。
いつから人のことを信じなくなったんだろう。





君のその手を握った僕は今でも歩いている。
君と一緒に歩いている。



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ともひと
 仁て大事ですね。
 イメージはやっぱり遼ちゃんなんですけど。
 どうみてもオリジですよね。(ぁ

2004.8
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