小指の爪






ガリッと言う音がして、思わず慌ててしまった。
珈琲牛乳のパックを開け損ねるなんて久しぶりだったから。

開ける口と、閉め切りの口を間違えてしまったらしい。
通りで固いと思った。


「はぁ」

思わずため息を漏らして、目の前の不格好なパックを見る。
最近はストローが刺せるタイプのパックばかりだったから、
きっとそのせいで勘が鈍ったに違いない。

「いて」

剥がれかけた右手の小指の爪。
さっきそれを舐めてから姿を消した兄。
モヤモヤする心。


ストローからちゅぅと中身を吸い出すといつもとかわらぬ味がして、それだけが
今の自分の日常のような気がした。







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ともひと
2008.7
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