ジャックナイフ






ここぞ、と言う時に抜くからこそ、それは武器になる。
ずっと抜いたままだったら単なる飾りなんだ。
空気に触れていればそれだけ錆びるし、人に見せびらかしていたら、なおさら本来の用途と違う。
だから私はその時迄しっかりと準備を怠らずに-



「そしていざというときに雨が降るんですね」
「そうだなぁ。いつもそうだよなぁ」
「日頃の行いのせいじゃないっすか?」
「女とっかえひっかえしてるから」
「その分デスクワークをしてくれればいいのですがね」



…。



「えっと…。あ、あれだよ。アンタの仲間ってアンタのことよくわかって…いやそのアンタ愛されてるんじゃね?うん」



鋼の…



「…何だよ」



私を外に連れ出すために昼食にでも誘ってくれないか。



「今日だけだぞ」



恩に着る。















「これで良かったんすか?」
「誘ってもらいたいからって何て汚い手を」
「まぁあの人だし」
「…では私も行って来ます」
「あ、あぁ」
「え?結局行くの?」
「当然です。午後から雨ですから」
「あちゃー」
「やっぱり日頃の行いですかねぇ」








鋼の

「あれ、雨だ」

…

「どうすんの?昼飯」

アルフォンス君も連れてきなさい。
近くのサンドウィッチがうまい店に行こう。

「俺、別に中の食堂でもいいけど」

…

「…」
「エドワードくん」
「あれ、リザさん」
「急な呼び出しで暇が無くなってしまいました。どうぞ食べてください」
「えっ、でも後で食べればいいんじゃ」
「それは冷めてしまっては美味しくないので後でまた食べに出ます」
「そっか。じゃあありがたく頂こうかな」
「ありがとう。では」









「ふぅん。そんなことがあったんだ」
「冷めたら美味しくないって言ってたけど、外から触っても熱くないからさ、開けてみたらこのサンドウィッチだったんだよ」
「愛されてるよね、大佐」
「だよなぁ」
「ところで兄さん、それはいいんだけど」
「ん?」
「なんで本人はずっと突っ伏してるのかな」
「さぁ…」

鋼の…

「うお動いた」
「そりゃ動くでしょ」

何故彼らは私が食べたいものまでわかるのだろうか。

「愛じゃねえの?」
「愛だよね、うん」

・・・・・・そうか

「おう」
「うん」

よし、食べて仕事するか!

「あ」

ん?

「いらないのかと思って全部食べちった」

・・・・・・・・・・・・・。





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ともひと
2012.6
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